Fabienk は、変な音なのに身体が先にわかる
Angine de Poitrine の "Fabienk" は、説明すると難しそうに見える。微分音ギター、複雑な打楽器、仮面を含むパフォーマンス、実験ロック。そう並べると、聴く前に少し身構えてしまう。
でも、実際に鳴る音はもっと身体に近い。ギターの音程はまっすぐな階段を上がらない。少し斜めにずれながら、耳の中に引っかかる。打楽器はそのずれを整えるのではなく、さらに足元を傾ける。なのに、不思議と置いていかれない。むしろ、変な角度のまま前へ進めてしまう。
"Fabienk" の面白さは、実験性が頭だけに閉じないところにあると思う。音は明らかに普通ではない。けれど、難解さをこちらに証明してくる感じではない。グルーヴがある。反復がある。身体が先に「これは動いていい音だ」と判断して、そのあとで耳が違和感に気づく。
KEXP のライブ映像で見ると、その感じはさらに強い。仮面や衣装は飾りというより、音の歪みと同じ方向を向いている。人間が演奏しているのに、どこか別の祭りの機械が動いているように見える。
入門としては、ジャンル名を急いで決めないほうがいい。プログレ、クラウトロック、マスロック、サイケ、そうした言葉はあとから置ける。最初は、ギターが少し曲がった線を描き、打楽器がその線を無理やり踊らせる感じだけを受け取れば十分だ。
"Fabienk" は、変な音楽への入口としてかなりよい。理由は単純で、変なのに、ちゃんと身体が先にわかるからだ。